やられた──
シンプルなロックサウンドをベースとしながらも理論やアレンジメントの奥行きが感じられる、この酷暑にぴったりの曲です。また、バンドのアイコンである理姫さんの独自なセンスが多分に散りばめられていて、エモお洒落な聴き心地になっています。
①”けろっとするには2℃足りない”
圧倒的な作詞センス……。まさに理姫さんのキャラクターを体現するかのようなリラックスした伸びやかな表現です。そのあとも、口語体で飾り気のない歌詞が続いていき、曲の世界観をどんどん作り上げます。
②”タイムライン更新しないで”
おじさんみたいなことを言いますが、「イマドキ」な歌詞ですね。ここまではっきりと現代文化の単語を入れながら、ちゃんと音楽として成立させていることに感激です。ここの部分以外にも、曲の節々に高い技術が感じられ、センスとテクニックのハイブリッドであることが窺えます。
③”オレンジに塩コショウ……”
タイトルにもなっているこの印象的なフレーズを抜粋しました。個人的に、そのタイトルの文字たちの連なりに宿る独自性や趣を「タイトル性」って言ったりしてるんですが、この曲も、そのタイトル性が著しく高いと感じます。言葉の意味自体も斬新ですし、ひらがなカタカナ漢字それぞれのバランスや語感もデザイン的で、思わず口ずさみたくなる素敵な言い回しだと思います。
曲を作るという面倒くさい山を登るにあたっては、ある程度のパターンやテンプレートを脳内に据えながら取り組むのが大体なところですが、この曲は、そういう枠組みみたいなものをあまり意識していないように感じます。前項で言及した、なかなか音楽にはそのまま取り入れにくい現代文化の単語や口語体のアプローチ、大胆な「てにをは」の省き方に至るまで、とにかく自由ですね。センスってそういうようなことだと思います。理姫さんをはじめ、この曲に携わった方たちが、「どこまで崩してどこまで整えて」ということを考えていたかは分かりませんが、自由な「センス」と規律的な「テクニック」が美しく調和された名曲と言えます。
『オレンジに塩コショウ / アカシック』
作詞:理姫
作曲:理姫
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