冬の列車が往き交う様は
冷たくドライで記号的
窓の隙間に零れる風で
掴む摩るは耳のたぶ
忙しく働く車両の扉
そこに飛び入る人の群れ
閉じて話して開いて聞いて
愛と自由を費やして
人と人とが繋がる先で
待ってる地獄のしがらみと
人と人とが繋がる先で
待ってる天国めいた愛
疑う私はどこにいるのか
内的世界の住人か
疑う私はどこにいるのか
外的世界じゃあてどなし
幾重に続く暮らしはまるで
虚しく広がる空のよう
幾重に続く暮らしはまるで
深く苦しい海のよう
すると俄かに隣のあなた
次の暮らしへ乗り換える
扉が開いて生まれた虚空
吸い込まれるはその背中
気づいた私と対照的に
明るく見せたその笑顔
それを両目で縁取るように
遅れた写真を撮るように
隣のあなたはどこへゆくのか
友と名付けるその前に
隣のあなたはどこへゆくのか
友と名付けた後だって
苦海まるごと 季節の轍
さらさら落ちるは時の砂
席の温度と解ける思い
“サヨナラ”如きにゃ荷が重い
春の列車が往き交う様は
相も変わらず記号的
風が車体を撫でさえすれば
私までもが乗り換える