ちゅんのMusic Recommendary(10) 『オレンジに塩コショウ / アカシック』


やられた──

シンプルなロックサウンドをベースとしながらも理論やアレンジメントの奥行きが感じられる、この酷暑にぴったりの曲です。また、バンドのアイコンである理姫さんの独自なセンスが多分に散りばめられていて、エモお洒落な聴き心地になっています。


①”けろっとするには2℃足りない”

圧倒的な作詞センス……。まさに理姫さんのキャラクターを体現するかのようなリラックスした伸びやかな表現です。そのあとも、口語体で飾り気のない歌詞が続いていき、曲の世界観をどんどん作り上げます。


②”タイムライン更新しないで”

おじさんみたいなことを言いますが、「イマドキ」な歌詞ですね。ここまではっきりと現代文化の単語を入れながら、ちゃんと音楽として成立させていることに感激です。ここの部分以外にも、曲の節々に高い技術が感じられ、センスとテクニックのハイブリッドであることが窺えます。


③”オレンジに塩コショウ……”

タイトルにもなっているこの印象的なフレーズを抜粋しました。個人的に、そのタイトルの文字たちの連なりに宿る独自性や趣を「タイトル性」って言ったりしてるんですが、この曲も、そのタイトル性が著しく高いと感じます。言葉の意味自体も斬新ですし、ひらがなカタカナ漢字それぞれのバランスや語感もデザイン的で、思わず口ずさみたくなる素敵な言い回しだと思います。
曲を作るという面倒くさい山を登るにあたっては、ある程度のパターンやテンプレートを脳内に据えながら取り組むのが大体なところですが、この曲は、そういう枠組みみたいなものをあまり意識していないように感じます。前項で言及した、なかなか音楽にはそのまま取り入れにくい現代文化の単語や口語体のアプローチ、大胆な「てにをは」の省き方に至るまで、とにかく自由ですね。センスってそういうようなことだと思います。理姫さんをはじめ、この曲に携わった方たちが、「どこまで崩してどこまで整えて」ということを考えていたかは分かりませんが、自由な「センス」と規律的な「テクニック」が美しく調和された名曲と言えます。

『オレンジに塩コショウ / アカシック』
作詞:理姫
作曲:理姫



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ちゅんのMusic Recommendary(9) 『失いたくないから / 乃木坂46』

誰にもきっと
失いたくないものがあって──

今や超国民的アイドルグループとなった『乃木坂46』のかなり初期の曲です。当時の乃木坂46は結成から日が浅くなかなか難しい立場にありましたが、その分商業音楽としての力みやプレッシャーがあまり無かったため、比較的シンプルで自由な音楽性を持っていたとも言えます。


①”君の白いシャツとグレイのスカートが”

いきなりニッチなことになってしまうんですが、「グレー」ではなくて「グレイ」なことにちょっとしたお洒落心を感じられて素敵だなと思います。どれほど意図して「グレイ」を選んだのかはわかりませんが、これくらい細部にもこだわりや信念を持って何かと向き合いたいと感じます。


②”雲が少しだけ…
…素敵な笑顔で…”

歌詞とメロディーが美しく重なる素敵なBメロです。1番の同じ部分と比べて文字数が増えていて結構早口になっているんですが、それがまた良い趣を生み出しています。また、一連の表現には心理的な描写が含まれていませんが、言わずとも主人公の胸の中にある大切なものを感じることができます。


③”斜めに見える
あの青空が”

この「蛇口の水を飲む姿勢から見える斜めの青空」が、主人公にとって、そしてこの曲にとっても大きな支えになっているようです。よく考えれば、この景色ってほとんど学生の頃しか経験し得ないものですね。そんな刹那的な青春のワンカットをスタート地点にして、そこから視覚の情報と心理の情報を巧みなバランスでミックスさせていく技術は、やはり天下の秋元康だと思います。
この世には様々な音楽がありますが、アイドルにしか歌えないことってあるはずです。純粋すぎたり真っ直ぐすぎたりする歌詞でも、アイドルが歌えばそのアプローチを成立させることができるでしょう。そして、グループとしての複雑な事情やパーソナリティを抱えながら歌う姿には一瞬の圧倒的な輝きが宿り、楽曲を彩ります。この曲も、そんな歌い手の美しさと儚さが綺麗に溶け込んでいて、より一層素晴らしい仕上がりになっていると感じます。

『失いたくないから / 乃木坂46』
作詞:秋元康
作曲:蛯原ランス


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ちゅんのMusic Recommendary(8) 『きみのみかた / きゃりーぱみゅぱみゅ』

信じてみないとスタートじゃない──

ファッショナブルなキャラクターと世の中にひとこと物申す音楽性が売りの『きゃりーぱみゅぱみゅ』の1曲です。この曲も例に洩れず、キラキラしたサウンドの中に社会批判的なアプローチが含まれています。僕自身、こういうちょっと過激めな思想が見え隠れする曲はあまり好まないんですが、どうしてもカッコいいので紹介したいと思います。


①”期待のリップサービスに…
…甘いキック キミが好き”

曲の世界観を第一に提示する大事な冒頭部分ですが、本当に言葉の並べ方置き方が巧みで感心します。本題に触れすぎないような間接的な言い回しでお洒落に韻を踏みながら、最後には”キミが好き”の結び。かなりデザイン性の優れたAメロだと思います。


②”少数派は見えない”

この曲の中でもかなり比重が大きい詞だと考えられ、言わずもがな昨今の社会問題について言及しています。今回、そのことについての個人的な意見や見解は端折りますが、ここまではっきり物事に切り込むことのできる決意の姿勢こそ、『きゃりーぱみゅぱみゅ』のカリスマ性なんだと思います。そのあと、”掻き消されないメロディー”という音楽に絡めた表現でサビへと向かうのも嬉しい構成です。


③”ぼくはきみのみかた”

あれこれ社会に対しての意見を言いながらも、結局根底にある伝えたいものは”ぼくはきみのみかた”だということで、ポップさとシニカルさを同居させているきゃりーちゃんらしい楽曲テーマだと感じます。
また、音楽的な観点ですが、もともと僕は作曲者である中田ヤスタカの大ファンで、彼の世界規模な才能と技術をとても尊敬しています。この曲も、シンプルなメロディーを立体的にする高度なアレンジメントがなされており、初めて聴いたときは感服しました。本当に非の打ち所がない……。
個性的なキャラクターのボーカリスト、それを支える天才的なコンポーザー。揺るがない圧倒的なブランドの上に生まれた名曲だと言えます。


『きみのみかた / きゃりーぱみゅぱみゅ』
作詞:中田ヤスタカ
作曲:中田ヤスタカ



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ちゅんのMusic Recommendary(7) 『14番目の月 / 荒井由実』

つぎの夜から 欠ける満月より──

日本を代表する歌姫・ユーミン(旧姓時代)のちょっと渋い名曲です。切ない乙女心を描いた歌詞ながら曲調は明るくポップで、ライブを盛り上げる定番のチューンだそう。因みにですが、僕の母親がとても好きな曲です。

①”あなたの気持ちが読みきれないもどかしさ…”

ユーミンの曲の多くは恋心を描いています。そして、どちらかと言えばネガティブとも取れる複雑な心情を美しく表現するというところに、一流としての品格とオリジナリティがあると思います。この曲も、一見後ろ向きのように捉えられるかもしれませんが、上品で繊細な言葉紡ぎと高い音楽性によって、見事にポップスとして成立しています。明るさ一辺倒でもなく、説教臭くもなく、誰しもに宿る恋心そのもののリアリティを追求しリスナーの隣に座って歌うような優しさこそが、今まで多くの人に愛されてきたユーミンというミュージシャンの本質のような気がしています。


②”um…IWANUGA HANA”

す、凄いです…。耳に入る分には、「言わぬが花」でも「IWANUGA HANA」でも同じですが、歌詞の視覚性にもこだわるストイックさと茶目っ気は、ユーミン独自のものだと思います。


③”14番目の月が いちばん好き”

歌詞の意味自体の素敵さもさることながら、「14番目の月」というワードに面白さを感じているユーミンの感覚も素敵だと思います。調べたところによると、当時公開されていたとある映画の中の台詞から抜き取ったようですが、それって「このワードは曲のタイトルに使えるぞ!」という創作のアンテナが敏感だってことですよね。考えてみれば、ユーミンの曲たちはタイトルが魅力的で且つ世に溢れる他の曲たちとあまり被ってません。つまり、言葉の連なりに宿るタイトル性や独創性を見抜く力が圧倒的なんだと思います。ひとことで言ってしまえば「センス」なんですが、その非凡なセンスを20歳前後のうちから遺憾なく発揮し、日本の現代音楽の草分けに大きく貢献したんですから、余りにも偉大だとしか言えません。半世紀経ってもこうして、恋や音楽の純粋な素晴らしさを感じさせてくれるユーミンの曲たちと出会えて本当に幸せです。

『14番目の月 / 荒井由実』
作詞:荒井由実
作曲:荒井由実




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ちゅんのMusicRecommendary(6) 『ほんとのきもち / 高橋優』

それが何であれ試行錯誤し傷つけ癒しあう僕らの今日──

日本テレビ系で放送されていた「Q10」という連続ドラマの主題歌だった曲です。ドラマ自体も繊細なシナリオで素晴らしく、それを彩るようにこの曲が花を添えていました。シンガーソングライターだからこその体重の乗った歌詞に、熱い「何か」を感じるのではないでしょうか。


①”階段の片隅で座りうずくまるあの人に…”

冒頭から様々な場面での疑問が並立的に語られ、世の中や自分の周りで起こることたちが、いかに不思議で、いかに不安定で、いかに不明瞭であるかということを訴えかけます。こういう並立的な表現って、謂わば音楽における大喜利だと思います。何でもかんでも並べ立てれば良いわけじゃないですし、森羅万象の中からセンスのある単語や文章を引っ張ってこなければいけません。そういう意味では、こういう構成にしようと思ったこと自体、とてもクリエイティブなアプローチだと言えます。


②”いつからか続いてる戦争の果てに…”

2番も同じように表現が続いていきますが、その中でも一際重たいメッセージです。省こうと思えば省けたはずですが、それでもこの歌詞を選んだというところにミュージシャンとしての覚悟が窺えます。


③”「君が好き」”

真相のはっきりしないものだらけの世の中で、ただ一つ確かなのは「(今、)君が好き」という僕の気持ちだけ。この結びを思いついた時点で、曲の企画書として完璧だと思います。難しいことを解決する策を私たちはいつも何も分かりませんが、そのことを考えたり悩んだりできていること自体は肯定的に捉えたいですし、何より誰かを好きということだけは見失いたくありません。そんな忘れがちだけれど大切なことを、情熱的に思い出させてくれる名曲だと思います。

『ほんとのきもち / 高橋優』
作詞:高橋優
作曲:高橋優



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ちゅんのMusic Recommendary(5) 『ちえのわ feat.峯田和伸 / 東京スカパラダイスオーケストラ』



ばらばらにしたくない──

ゲストボーカルに銀杏BOYZの峯田和伸を招いた、東京スカパラダイスオーケストラの歌モノシリーズの中の1曲です。折り目正しいオーケストラサウンドの中を、自由な歌詞と自由な歌声が跳ね回るエネルギッシュな仕上がりになってます。

①”離れた方が楽だって
分かってはいるんだ”

頭のいい友だちはそう言うでしょう。要領良く生きようよ、ストレスフリーに生きようよ、そんな通念が飛び交ってる世の中です。周りから見れば一層、くっつき合って問題だらけの関係はバカらしく映ると思います。本人もそのことには何となく気づいていますが、それでも”ちえのわ”のままでいたいことを強く叫びます。ただの言葉では言いにくいことを言うために音楽があることを思い出せてくれます。


②”虚しくてまた元に戻した”

本当にいい例えを見つけたと思います。確かに”ちえのわ”って解いた瞬間は強烈に嬉しいですが、そのあとは段々解いてしまった虚しさがやってきて何だか拍子抜けしてしまいます。絡まったままガチャガチャしてる瞬間こそが、”ちえのわ”という存在の本質なんです。


③”めんどくさいのが愛だろっ?”

様々な人と人の関わり方があると思いますが、利益だけで付き合ってる関係ってやっぱり寂しい気がします。愛なら尚更。汚いところも難しいところも含めて愛であって欲しいですし、変な「カタチ」と変な「カタチ」が絡まり合ってて欲しい気がします。それにしても、峯田和伸という男はどうしてこうもずっと魅力的なんでしょう。「何」を歌っているかも勿論大事ですが、「誰」が歌っているかもそれと同じくらい大事です。そういう意味では、この曲を峯田和伸が歌っているということは凄く重要だと思います。彼は、生粋のミュージシャンで、生粋のボーカリストで、生粋の変な「カタチ」ですから。

『ちえのわ feat.峯田和伸 / 東京スカパラダイスオーケストラ』
作詞:谷中淳
作曲:川上つよし



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ちゅんのMusicRecommendary(4) 『風吹けば恋 / チャットモンチー』


走り出した恋は止まらない──


日本を代表するガールズバンド『チャットモンチー』の人気曲です。CMソングだったので、聴いたことがある人も多いのではないでしょうか。ガーリーでもありシニカルでもある、王道でもあり斬新でもあるような、そんな唯一無二の音楽性がよく表れた一曲だと思います。



①”はっきり言って努力は嫌いさ”

このように、社会に広く通用してる一般的な価値観を”私”は好まないようです。それなのに何故か、見た目や世の中を気にしてしまっている……。そんな恋の複雑な本質を、オリジナリティのある詞で上手く表現しているAメロだと思います。にしても、”はっきり言って努力は嫌いさ”と言えるあたり、音楽って自由なんだなぁと感じます。カッコいい。


②”新しい私がこんにちは
新しい私よこんにちは”

文法的な話になりますが、”新しい私がこんにちは”というのは、新しい私が現れたという事実だけのニュアンス、”新しい私よこんにちは”
というのは、その現れた新しい私を受け入れるようなニュアンスが含まれているように感じます。こういう機微を当たり前のように扱えるのがプロのミュージシャンなんだなと思いますし、また、対句表現の中の一文字を変えるだけで、これほど主人公の感情展開を表現できてしまう日本語の美しさにも同時に感動します。


③”行け! 行け! 私の両足”
ラスサビです。意外なことに、ここでようやく”恋”という言葉が出てきます。今までは”恋”を縁取るように言葉を紡ぎ、最後になってまた、リスナーに”恋”を明確に意識させるという飽きさせない構成です。”私の両足”部分はそれまでとメロディーが変化してますし、そもそも間奏(+アウトロ)だってサビの曲調から考えれば結構奇抜なアプローチです。チャットモンチー自体、メンバー編成やバンドとしての在り方は「完結」までに幾度も変化しましたが、根底にはこういう上質な天邪鬼みたいな感覚が豊かに存在していたように思います。だからこそ、一辺倒なただのバンドの枠に収まらず、未だに多くのフォロワーを増やし続けていってるのではないでしょうか。



『風吹けば恋 / チャットモンチー』
作詞:高橋久美子
作曲:橋本絵莉子


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ちゅんのMusicRecommendary(3) 『私がオバさんになっても / 森高千里』


私がオバさんになっても 本当に変わらない?──

言わずと知れた森高千里の代表曲です。彼女自身による独特な感性の歌詞と明るくてキャッチーな曲調がマッチした、90’sポップスの金字塔と言えます。個人的にも、只のアイドルに収まらない森高千里の抜きん出たブランドが前面に押し出されている随一の名曲だと感じます。


①”秋が終れば冬が来る”

当たり前のことを言っていますが、この導入のフレーズを実際に捻り出すのはすごく難しいと思います。冒頭のブロックで簡潔に語られる、あなたと私のキューティーな関係性。森高千里のミュージシャンとしての才能が遺憾なく発揮されています。

②”女ざかりは19だと”

マイルドに歌われていますが、なかなか刺激的なセリフですね。ただ、そのあとのBメロで、あなたのそんなちょっとひどくて憎らしいところも含めて愛しいという気持ちが表され、見事なカヴァーです。こういう複雑なニュアンスを、洗練された言外的な文章で伝えるということが、謂わゆるセンスとテクニックなんだなと感じます。

③”私がオバさんになったら あなたはオジさんよ”

①に続いて意味としては当たり前のことですが、終盤の展開付けとしてこういうアプローチを持ってこれるというのも、やはり森高千里の内から滲み出る才能なんだと思います。ミュージシャンとして欠かせないセンスとテクニック、それに加えてステージプレイヤーとしての圧倒的な『華』が彼女にはありました。曲の凄さをとやかく解説することは幾らでも出来ますが、とどのつまり、ステージの上で微笑む彼女のその『華』自体が、多くの曲を彩り、多くの人を魅了していたんだと思います。そして、そんな彼女の圧倒的な『華』は、この曲から30年経った今でも、森高千里をオバさんに変えなかったとも言えるでしょう。

『私がオバさんになっても / 森高千里』

作詞:森高千里
作曲:斉藤英夫


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ちゅんのMusicRecommendary(2)『床には君のカーディガン / The SALOVERS』


どうも。「かんりしゃ」です。
スタッフの推し!「ちゅん」のMusicRecommendaryです。

「ちゅん」の個性が出た文章になってますね。ええ感じです。
ぜひとも、よろしくお願いします。


↓↓↓


床には君が脱いだカーディガン!──

The SALOVERS。子供と大人の狭間に立って、青春の複雑な感情と衝動を力強く繊細に描くバンドでした。そんなバンドカラー全開の代表曲を紹介します。

①”「 明日何時起き?」”

“一つになれるのは身体だけでさ”、といきなりのパンチライン。曲のテーマがすぐに分かる上手い導入だと思います。優しくしていることに違和感を持ちながらも、一人が嫌という感情もあって……。そんな青春の複雑な一幕を、SALOVERSの中でもとりわけシンプルで衝動的なアレンジが彩ります。

②”「寒くないの?」”

追いかけてまで引き留めたのに、別の誰かが君を呼んでいて、寝顔も知らない人のように感じられて──。そんな二人の関係性を示すかのように部屋は冷めきっていて、その床で徒に横たわる君が脱いだカーディガン……。決して多くはない文章の中で、状況説明と心理描写が綺麗に同期された表現が、簡潔に矢継ぎ早に独創的に続きます。主人公の中に居座る難しい渦が加速していっているように思えます。

③”「好きだよ」”

“「好きだよ」”をここまで苦く表現するなんて、圧倒的な最後のサビだと思います。恋愛ソングはこの世にごまんとありますが、大抵、幸せか不幸せかの二極です。そんな中、わざわざ青くもどかしいニュートラルな現状を曲にするのは、10代後半から20代前半を音楽と共にあっという間に駆け抜けたSALOVERSだからこそのアプローチだと言えます。『いつでも読み返すことのできる青春を綴った1冊の本として、完結させずに残しておきたい』として、SALOVERSは無期限活動休止という形で幕を閉じました。まさにバンドメンバーの人生や生活がリアルタイムでのみ反映された美しく刹那的なバンドだったと振り返ることができます。

『床には君のカーディガン / The SALOVERS』

作詞: 古舘佑太郎
作曲: 古舘佑太郎


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ちゅんのMusicRecommendary(1)『流星 / TiA』

どうも。「かんりしゃ」です。
「スタッフの推し!」第1弾、ちゅんのMusicRecommendaryです。

別のブログとリンクさせていましたが、いろんな理由で、このブログでまとめるかたちにします。改めてよろしくお願いします

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みんなの「好き」から仕事にする。よろしくお願い致します。


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流星のように――

 テレビアニメ『NARUTO -ナルト-』のエンディングテーマだった曲です。当時は幼なながらに何となく聴いていましたが、大人になってから聴けば、人間や人生に対する想いが強く美しく歌われてる曲だと気づきました。音楽的な観点でも、とても繊細で工夫がされていると思います。

①君

“「それぞれに違う輝きがある」と

笑う君が 一番眩しく見えるよ “

 この歌詞にあるように、主人公は君のことを特別に想っているようです。ただ、それが友だちとしての好意なのか、仲間としての尊敬なのか、はたまた恋愛感情なのかは、はっきりと明言されていません。解釈の幅を広く持たせて、ただ目の前に居る人に対する純粋な気持ちを表現しているように思えます。また、”「それぞれに違う輝きがある」”という台詞を言える君が主人公にとっては一番眩しく見える、というのも素晴らしいパンチラインだと思います。結局、特定の誰かは特定の誰かのことが一番眩しく見えますからね。

②夢

“どんな時も君は君だから

ありのままでいて”

 人間、ごちゃごちゃした荷物に惑わされず、本当に大事なものをありのまま信じて生きることができたらとても豊かなように思います。シンプルかつリラックス……。ただ、それは簡単なことではないでしょう。自分や他人からのたくさんのノイズに悩まされ、希望を見失うこともあるはずです。それでも、夢から差す光を手繰り寄せながら、”迷い続けることがひとつの答えになる”と思えば、気持ちが明るく軽くなるような気がします。

③時

“時は流星のように 長く光る尾を引き”

 今まで流星を色々なものに準えてきましたが、それらを運びながら進む『時』自体が流星のようだという締め括りです。幾らかの過去を残しながら駆け抜けていく時の中でたくさんの今が生まれ、その今と『向き合うべきだ』や『向き合いたい』ではなく、”向き合う強さをあきらめたりしないと誓おう”といった独創的で優しい決意が光る最後のサビだと思います。

『流星 / TiA』

作詞:TiA ・小林夏海

作曲:TiA ・河野圭

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