どうも。「かんりしゃ」です。
こくりのインタビュー企画、MuSuBuの第2弾、池田光芳さんです。
池田さんのことは、インタビュー第1弾の石田さんから紹介頂きました。
今回「かんりしゃ」とは初対面でしたが、何度かお会いしたことがあるかのような、気楽に接せさせてくださる方でした。
臨床心理士/公認心理師として活動している方です。仕事で大切にしていることのエッセンスは、インタビューにしっかりつまっていると思います。お楽しみに。
※インタビューは「かんりしゃ」と「ちゅん」とで実施しました。文字起こし・文章校正は主に「ちゅん」が担当しました。青字は「かんりしゃ」、赤字は「ちゅん」の発言です。
【池田君はいい人になりたいんか?】
──今はどのようなお仕事をされていますか?
臨床心理士として働いています。主な領域としては、子ども関係ですかね。
詳しく言うと、市役所に相談員という形で勤めていて、そこから市内にある保育園や小学校・中学校に派遣され、そこで子どもたちと関わるということを仕事にしています。
──子どもたちとどのようなことをするんですか?
年齢が小っちゃいところに行ってると、発達のことばかり見ているように思われがちかもしれないんですけど、僕はそうというより子どもと楽しく遊ぶということをまず大事にしています。
あとは、その楽しく遊ぶ中で見えてくる子どもの様子なんかを担任の先生や保護者の方と共有したり、といった感じですね。やっぱり、発達の話だけをメインにしてしまうと子どもが背負わないといけないものが大きくなるというか。子どもの発達って、どういう環境で育ってきたかとか、どういう人間関係に囲まれていたかとか、どういう遊びをしてきたかとかの一つ一つが吸収されて固まっていくものだと思うので、子どものことだけを点で見るやり方は僕がやりたい心理の仕事ではないですね。
──では、その仕事のやりがいや大変さを教えてください。
んー、この質問、自分でもめちゃくちゃ考えたり後輩にも訊いてみたりしたんですけど、結局、「やりがいって何やろう?」というところで行き詰まった感じがあって。これがモノを作る仕事や職場であれば、お客さんが喜んでくれたり、売上が良かったりすることがやりがいになるんだろうけど、僕が扱ってる心理職って話になると、例えば面談を行っても何が良くなって何が悪くなってみたいな尺度は実際には目に見えないじゃないですか。
だからそう考えると、やりがいとか達成感とか目標みたいなものが無いというところにこの仕事の面白さや難しさを感じているのかもしれないですね。
で、大変さで言うと、ある時急に「俺、何してんねやろ」みたいに自分が迷子になる時があって。そうなるとやりがいを探しに行ってしまうということが起こるんですよね。
10年くらい前かなぁ、とあるおじいちゃん先生に「池田君はいい人になりたいんか?」と言われたことがあって、それが今でも僕の胸にグサッと刺さったままなんです。これって、変に空回りして役に立とうとした途端に相手との関係が崩れるみたいな意味を含んでると思うので、自分のやりがいのために何かをしてしまいそうになった時はこの言葉を思い出して戻ってくるようにしてます。
そうやって、崩れそうな自分を何とか保つっていう作業が僕は大変だと思いますね。
【転がる】
──今の仕事をやるに至った経緯を教えてください。
僕がこの心理の仕事をはじめたのは、本当申し訳ないんだけれど、たまたまなんですよ(笑)。
元々は小学校の教員になりたくて大学受験をしたんですけど、その時に本命の教育学部と一緒に心理を扱ってる学部も予備で受けておいたんです。で、共通テストの点数によってどちらに振り分けられるかってところで心理の方の学部だけ受かって。ただ、そこで「学校の先生じゃなくても子どもと関われる仕事ってあるよね」みたいな切り替えが自分の中に生まれたんです。そこから僕の心理の道が始まりましたね(笑)。で、無難な大学生活を過ごしていた三年生の時、みんなが同じようなスーツを着て就活に行ってるのを見て、「あ、これ俺違う」とも思ったんです。それで、「あのスーツを着ないで済むにはどうしたらいいんやろ?」って考えた時に、「もうちょっと勉強しよ」ってなって、大学院に逃げることになるんです(笑)。
そこから大学院に2年間通って、今の心理職になったっていう流れですね。
──どういう経緯で関西に来ることになったんですか?
僕の嫁さんが大阪の人でして、その当時「大阪に来ないと別れる!」と言われたんです。それなら「じゃあ行くしかないか」って感じで大阪に来ましたね(笑)。
──では、そもそもなぜ教師や子どもに関心があったのですか?
何なんでしょうねぇ……(笑)。まぁ家庭の要因を考えると親父が教員だったってことがあると思いますし、僕は大学の4年間ずっと小中学生を教える塾で講師をしていたのでそれもあると思いますし……。うーん、だから、何って決定的なものがあったわけではなくて、ふんわり「子どもって好きだな」っていう感覚があったんじゃないかなぁ。
──スタッフのちゅんです。教育学部に受からなかったことや奥様について行って大阪に来たことなど、全然予期していない方に転がっていく様がまさに“人生”をされてるなぁと思い、素敵で面白いなぁと感じながら聞いていました。ご自身ではその辺りをどう感じていますか?
そうですね、転がってった先で何かとぶつかって、転がり方が変わって、砕けることがあったり、くっついたり離れたり、大きくなったり小さくなったり、とかが色々合わさって今の自分を形作っていると思うと、まさに“転がる”って感じがして、今自分の中にストーンと入ってきました。良い表現ですね。
【いかに寄り添って細く長く……】
──“はたらく”上で大切にしていることはありますか?
えーっと、これは語弊があるかもしれないんですけど、はたらく場所と同化しないように頑張ることかな。それこそ僕は肩書きとしては公務員になるんですけど、その中でも池田でありたいなと思ってるんです。そこのラインが崩れてしまったら、僕である意味は無いという感覚ですね。
──では、そもそも“はたらく”って何だと思いますか?
いやー、これもなかなか言葉を選ばないとですね……(笑)。
そうだなぁ、本当に綺麗事抜きで考えたら、自分や家族が生きるためにはたらいているっていうのが第一かなぁ。まぁただ、心理職として大切にしていることも勿論あって、いかに寄り添って細く長くその人と付き合えるかみたいなのはモットーとしてやってます。効率とか成果を目指さずに、時間の流れに任せてはたらくみたいな感じですかね。
──多分その、自分や家族が生きるためにはたらくという側面と、いかに寄り添って細く長くその人と付き合えるかという側面って、同居するんでしょうね。どっちかだけが本物ってわけじゃなくて……。
そうですね。同じことをやってても、見る角度によって見え方は変わってくると思います。
【人生に電柱はない!】
──どういう瞬間のために働いているなどがあれば教えてください。
僕は心理シっていう職種なんだけれども、たぶん変わってるっぽくて、面談をしてるよりも、学校に行って子どもたちと一緒に授業や部活をやってみるみたいな機会の方が多いんですよね。だから、子どもと関わるっていうところに限定すると、子どもと一緒に笑うために働いてる感じはします。
ほんで、僕、めちゃめちゃハイタッチするんですよ(笑)。それぞれの学校、保育園にハイタッチ仲間みたいなのが居て、その子たちとそういう関わりができたら、「あぁ今日も来て良かった」と思える瞬間ではあります。
──では次に、どういう瞬間のために生きていますか?という質問をしたいのですが、この質問の意図も含めてちゅんに少し説明してもらいますね。
──僕は今、日々暮らしている中でただただ事務的に過程がずーっと続いているだけだなという感覚があって、その現状に少し違和感があるんです。人の暮らしには大きな目標とは別に、都度都度小さなゴールみたいなのも必要だと思ってて、例えば、少し歩く度にそこに立っている電柱にタッチしてちょっとした区切りをつけていくみたいな。でも、「ああこれが電柱だな」ってなかなか感じられるものじゃないし……。このことについてどう思いますか?
はぁはぁ、なるほど。うーんと、僕としては人生において電柱というものはない!(笑)というか、道すらない!(笑)。
マインクラフトってあるじゃないですか。あれで、まっさらな地面しかないっていうモードがあって、まさにその状態かもしれない。平らな場所に池田がポツンと立ってて、どっち向いても地平線しかないみたいな。そういうデカいところでやってくしかない感じはありますね。
ただ、結果としてどこかにお宝が落ちてたら嬉しいやんという感覚はあって、振り返ればそういうお宝がいつも定期的にあったなぁとは思います。家に帰ったらビールを飲むみたいなのもそういうことだと思うんですけど、でも、ビールを飲むことを目的にしてるわけでもないし、これをしたらビールを飲もうって決めてるわけでもないし……。
だから、僕はここまでやったらこれをしようみたいな設定は何をするにしても全然ないですね(笑)。
──その生き方って意図的なものなんですか?
んー、自分でそうしようとしてる部分もあるし、そういう性格なだけなのかもしれないしで、たぶん両方ですね。というか、いい加減な池田さんで通してるみたいなところがあって……(笑)。だから、僕と全然波長が合わない人も居るんだろうなあとは思います(笑)。
──何というか、極限の自然派というか……。
──自由と恐怖が同居しているというか……。
あはは(笑)。でも、こんなこと話しておきながらなんですけど、僕はビビりなところもあって。仕事柄、パワポを使って発表することがあるんですけど、事前にスライドを何回も何回もめくって紙芝居のように頭の中でめちゃくちゃシミュレーションするんです。ただ、その反面、発表資料とか原稿とかは一切書かないんですよ。これが自分でもわけわからんところではあるんですけど。
だから、見る角度によっては、めちゃめちゃ準備してるやんとも言えるし、一文字も台本書いてないやんとも言えるしで、そういう矛盾というか共存というかが僕の中にはありますね。
【自分が愛って言えたらそれが愛なんだ】
──個人的なことなんですが、僕は“愛”というものを人生のテーマのひとつにしていて、“愛”を探しながら日々生きているんですけど、結局まだあんまり見つかってないんです。池田さんににとって愛とは何ですか?
んー、難しいですねぇ……。まあ、何となく「“愛”って何やろう?」と思ったときに愛に近い言葉、好きが思い浮かんで。ただ、愛と好きってどう違うのかと言われたら「よくわからんなぁ」って感じで……。で、
そのあと考えたのは、アイドル愛とか鉄道愛みたいな愛。つまり、自分が注ぎ込めることであるなら、他人にどう思われようが、それは愛という言葉を使っていいんじゃないかなぁみたいな。例えば、「カレー愛があるんです」って言ったら、周りからは「この人、たくさんの種類のカレーを食べてきたんだろうなぁ」って思われるのかもしれないですけど、でもそんなんどうでもよくて、こくりのカレーのみを食べることにエネルギーを注いでいるというのも完全なカレー愛だと思うんです。
だから、「自分が愛って言えたらそれが愛なんだ」っていう風に僕は性格上言い切れちゃいますね。というか、そうやって誤魔化さないとやってられへん部分があるんだと思います。
──大前提として愛という概念に興味や価値を感じるかみたいなところも関係してそうです
──さっきの電柱理論、お宝理論とも通じるところがある気がします。
あと、喋ってて思ったのが、一回愛って言っちゃったらずっと注ぎ続けないといけないわけでもないな、って。コロコロ変わってもいいというか。「ちょっと今日だけ、愛、お休みね」もアリなんじゃないかな(笑)。
【赤ちゃん】
──これからの仕事・人生についてどう考えていますか?
んー、これからもこのままでありたいって感じはしますね。ただ、その一方でしがみついてるものは何もなかったりもします。あと、仕事の内容で言えば、子どもと関わるということをもっと突き詰めて、赤ちゃんとより関わりたいなぁと思います。生まれたてから2歳3歳ぐらいまでの乳幼児の子と関わる仕事っていうのが、僕にとってめちゃくちゃ面白くて好きなので。
だから、それをもっと専門的にできる環境があるならやりたいし、自分でその環境を作ってもいいし。とにかく、今よりも自分のやりたいこと側により寄っていきたいなというのがフワッとある感じですかね。かと言って、それを実現するために何か目標を作ってるわけでもないんですけどね。
──んー何というか、池田さん自身も赤ちゃんのような方なんでしょうね。
あはは(笑)。自分と赤ちゃんには何か重なるところがあるのかもですね(笑)。
──何が重なっているのですかね。おもしろそう。本日は大変貴重なお話をありがとうございました。
──ありがとうございました。
写真撮影:「きょうの野菜」
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ここからは、こんな池田さんをかたちづくった作品たちを一部紹介します。
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以上、こくりのインタビュー企画MuSuBuの第2弾でした。
池田さん、お忙しい中、お時間をとって頂き、本当にありがとうございました。
第3弾も、しずかーに動き出しています。こうご期待。