ちゅんのMusic Recommendary Season2(3) 【アニソンプレイリスト】

第3回。今回は季節から離れてアニソン縛りにしました。個人的にアニソンというよく分からない文化が好きで、アニメ自体を観ていた曲も選んでますし、その曲だけ知っているのも選んでいます。要は雑多です。

①創聖のアクエリオン / AKINO
『創聖のアクエリオン』OP曲。SFロボットアニメらしい壮大な曲となっております。当時、CMなどで大層流れたので知っている人も多いんじゃないでしょうか。”一万年と二千年前から愛してる”の歌詞が余りにもキラーワードで、そのあとでやや唐突に”音楽”という歌詞が出てくるのも嬉しいポイント。サビ前に雷のように転調するのも最高。

②少女S / SCANDAL
『BLEACH』OP曲。SCANDAL初期の有名曲ですね。音源を聴いても少し幼い雰囲気です。そこから時を経た結成10周年公演での演奏を観たことがあるのですが、そこでは人間としての色気や厚みがより強化されていてSCANDALというバンドの真髄を感じることができました。2番のBメロが1番と比べて短くなっているところがなかなかクール。

③悲しみをやさしさに / little by little
『NARUTO-ナルト-』OP曲。アニメもよく観ていました。小さい頃は歌詞の意味や深みをよく理解できずに聴いていましたが、大人になって聴くと”そうだ 大事な物は……気付かぬまま”を筆頭に、「本当にその通りだなぁ」と頷ける歌詞ばっかりです。すごい曲です。

④アイドルはウーニャニャの件 / ニャーKB with ツチノコパンダ
『妖怪ウォッチ』ED曲。僕の好きな妖怪ウォッチとAKB48が奇跡のコラボ。色モノ曲と見せかけてかなりカッコいい曲に仕上がっており、特にギターとベースのアンサンブルがなかなか本格的にロックでイケイケ。ちょうど良くシニカルな歌詞もキャッチーで素敵です。

⑤Catch You Catch Me / グミ
『カードキャプターさくら』OP曲。広瀬香美がプロデュースを手掛けた、グミ(日向めぐみ)のデビュー作。広瀬香美らしい抑揚豊かで型破りなメロディーと、それに平気でついて行くグミの歌唱力が印象的です。因みに、後述の恋愛サーキュレーションの作詞をこのグミさん(正確な名義はmeg rock)が担当してたりします。

⑥Cagayake!GIRLS / 桜高軽音部
『けいおん!』OP曲。けいおん!らしい明るくガーリーな仕上がりになっています。桜高軽音部に中野梓という後輩メンバーが加入する以前と以後でアレンジが異なり(4人ver.と5人ver.)、どちらのアレンジもそれぞれの良さがあってカッコいいです。これからもけいおん!の曲は何回か紹介すると思います。

⑦おジャ魔女カーニバル!! / MAHO堂
『おジャ魔女どれみ』OP曲。間違いなく平成アニソン界の金字塔と言えるでしょう。イントロとAメロ前半、Aメロ後半、Bメロ、サビ、とコード進行のバリエーションが多彩で、1番と2番の間の間奏では転調もしているほど何でもアリのパーティーバーレルみたいな曲です。

⑧God knows… / 涼宮ハルヒ(平野綾)
『涼宮ハルヒの憂鬱』劇中歌。劇中でハルヒを含むガールズバンドが文化祭で披露したロックナンバーで、劇中歌史上一番有名で人気のある曲かもしれません。やりすぎなくらい激しいギターリフとハルヒ(平野綾)の逞しい歌声が魅力的です。

⑨恋愛サーキュレーション / 千石撫子(花澤香菜)
『化物語』(一応)OP曲。前述のGod knows…と同じ神前暁という天才アニソン作家による作曲で、音楽として機能的で美しいメロディーが光ります。特にサビのメロディーがとにかく神懸かっていて、めちゃくちゃ気持ち良いです。作曲家ってこういうことだなって感じます。そして、花澤香菜の表現力と人気もすごい……。

⑩星間飛行 / ランカ・リー=中島愛
『マクロスF』劇中歌。こちらも伝説の劇中歌。松本隆による奇跡の詞とポップ且つセンチなアレンジにうっとりすること請け合い。”星間飛行”というタイトルで恋愛系の曲を書くということ自体が素晴らしいアイデアですし、”けし粒の生命でも……魂に銀河 雪崩れてく”のリフレインフレーズには流石松本隆と言わざるを得ません。本当に名曲だと思います。




↓↓↓applemusicで、上記10曲のプレイリストをつくりました。ぜひダウンロードしてください。

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ちゅんのMusic Recommendary Season2(2) 【夏のプレイリスト】

暑いですね。そうです。夏のプレイリストです。



①サマーヌード / 真心ブラザーズ
高揚感と気怠さに満ちた真夏の瞬間を美しく切り取った名曲です。山Pがドラマの主題歌でカバーしたことで知っている人も居るんじゃないでしょうか。緩急のついたメロディーラインとそれを歌うYO-KINGの気取らないスタイルが実に渋くてカッコいいです。サビの最も有名なフレーズに”僕ら今 はしゃぎすぎてる 夏の子供さ”とありますが、歌詞全体を見ると、ひと夏の君との瞬間をすれ違いも含めて見届け受け入れる様を読み取れるので、逆にすごく大人な歌詞だなぁと僕は感じました。


②すごい速さ / andymori
andymoriという革命的なスリーピースバンドが居るんです。彼らの曲は基本的にいつもシンプルで短いですが、それでも圧倒的に伝わってくるものがあるというか、底知れぬパワーとセンスを感じられます。ライブの方がよりそれが顕著だと思うので、是非聴いて欲しいです。たった1分25秒で夏が過ぎていきます。


③夢の外へ / 星野源
“夏は通りをゆく”のフレーズが印象的だったので選びました。この曲は「マジョリティとマイノリティ」「現実と夢」みたいなものを上手く描いていると思います。そして、個人的には、星野源がずっと社会と自分を疑い信じ続けた生き様のような曲だとも感じます。2番に”自分だけ見えるものと…… 僕は真ん中をゆく”とありますが、本当にその通りだと思います。この曲の意味や価値がちゃんと分かる人生で良かった。


④HOT HOT HOT! / The SALOVERS
どうしても毎回紹介したいSALOVERS。特にこの曲はかなりお気に入りです。シンプルな夏の恋の曲ではあるんですが、詞の選び方外し方などが上手くて惚れ惚れします。音楽的なことを言うと、この曲はキーがCメジャーという一番有名で演奏しやすいものなのですが、逆にそのキーでまっすぐ勝負できるというところに潔さとカッコ良さを感じたりします。バンドっていいなぁ。


⑤みどりと森の運動公園 / NGT48
新潟市に実際にある公園が舞台の曲です。詞や曲のアプローチがまっすぐで美しく、コードやメロディーも滑らかで、ふとした時に聴くと涙腺に来るぐらい何とも言えない青春が宿っています。ファンの間でも人気の曲みたい。いつかこの公園にも行ってみたい。


⑥Green Shower / みきとP
夏の喧騒から一歩路地裏に入ったようなリラックスした涼やかな曲です。有名ボカロPのみきとPが本人歌唱しており、ミュージシャンとして紆余曲折あった彼だからこその詞が感動的です(“諦めてしまった夢もあった……”)。VOCALOIDがコーラスに入っているのもトキメキポイント。


⑦夏の終わり / 森山直太朗
圧巻の「Uh……」から始まって、滑らかに美しく詞が紡がれていきます。景色の描写に心情を代入するのがとても巧みで、リスナーそれぞれにある夏の思い出が呼び起こされ溶け合っていくような感じがします。YouTubeにアップされているLIVE ver.がまぁ凄い……。因みに、森山直太朗本人によるとこの曲は反戦歌なのだそう。


⑧サマータイムレコード / じん
マルチクリエイターであるじんさんによるカゲロウプロジェクトという企画のED曲という扱いでして、歌唱はVOCALOIDです。何百回聴いたでしょうか。本当に名曲だと思います。コードとメロディーの関係がとても美しく且つキャッチーで、サビに至ってはソラドレミの5音しか出てこないという凄さ……(ペンタトニックスケールとか言ったりします)。ボカロ界がこれからどうなっていったとしても、永遠に褪せることのない金字塔です。


⑨若者のすべて / フジファブリック
以下2曲は早くも恒例(?)、僕の人生におけるマイベストテン入賞曲です。
数年前、深夜ラジオ好きだった僕は、あと数回で終了が決まっていたナイナイのオールナイトニッポンを何となく聴いていました。すると、何とも落ち着いた心地良いこの曲が流れてきたのです。これがフジファブリックとの出会いでした。好きなものが好きなものを連れてきた瞬間でもありました。この曲を作った志村正彦曰く、「今まで何かある度に立ち止まって考えてたんですけど、それって勿体ないということに20代後半になって漸く気づいたというか。だから、考えながら歩くためのBGMとしてこの曲を書きました」とのこと。僕もじわじわ20代後半に近づく中で、彼のような人間に少しでも近づけてたらなと思う日々です。


⑩ポニーテールとシュシュ / AKB48
とてつもないパワーを秘めた曲だと思います。この曲がリリースされたのは2010年の5月。AKB黄金期の少し手前でしょうか。僕は大体その辺りからAKBを追い始め、少しずつフェードアウトしながらも、心の片隅には輝かしい彼女たちの軌跡を確かなアイデンティティとして携えて生きています。僕はその後とある事情で入院することになり、お医者さんが放った「死ぬかもしれない」の言葉に対して、「ここで死んだらポニシュシュもう聴けないなぁ」という今となっては何とも不思議な思い留まり方をしたりもしました。ラスサビで半音上がって、ラララゾーンがあって、最後はダメ押しのアウトロ。時代柄、MVの砂浜にくっきり映ってしまっている撮影ヘリの影すら愛しく、何もかもが僕たちの青春の象徴のような曲です。




↓↓↓applemusicで、上記10曲のプレイリストをつくりました。ぜひダウンロードしてください。

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ちゅんのMusic Recommendary Season2(1) 【春のプレイリスト】

第10回まで更新され、そこから暫くお休みしていたこの「ちゅんのMusic Recommendary」が、Season2になって帰ってきました。1曲を深掘りする形式から、その時々のテーマに因む楽曲を集めたプレイリストを紹介する形式へとマイナーチェンジ(それぞれの曲にミニコメント付き)。またぼちぼち10回くらいまで続けばいいところかしら。よろしくお願いします。



ということで第1回は「春」のプレイリストです(気温はもう夏に近づいておりますが……)。これから季節モノは出来るだけ欠かさずにやりたいと思っているところ。どうなるでしょう……。




①『桜の季節 / フジファブリック』
春のプレイリストを作ろうと思って真っ先に浮かんだ曲です。僕はずっとフジファブリックを聴いてきて、特にギターボーカルの志村正彦が存命だった時代が好きなのですが、この曲はまさにそんな志村正彦の才能やセンスが表れていると思います。ロックバンドがやるアプローチとしては詞も曲調も難解でひねくれていますが、そういう下手に明るくしてしまわない音楽性が素晴らしいと思います。



②『春泥棒 / ヨルシカ』
春の美しさや儚さを題材にして、命と別れを芸術的に切り取った見事な一曲です。My Seroof Album制作進捗日記の方でも紹介しましたが、僕はこの曲を聴くとすごく色んな感情が浮かんできます。ただそれこそ、春の持つ複雑な表情なのかもしれませんし、もっと言えば人生そのものなのかもしれません。人間はいつも、春についてあれこれ考えますね。



③『桜の木になろう / AKB48』
AKB48黄金期の桜ソングです。当時AKB48のファンだった僕は、今この曲を聴くとちょっとエモすぎて胸が苦しくなってしまいます。アイドルの楽曲は基本どうしても商業曲なのでしょうもないものもたくさん生まれますが、こういう生々しい青春の輝きや諸々の事情、誰かの思い出や人生自体を多く巻き込んで成立する曲には、他では味わえない唯一無二の良さがあると思います。



④『卒業 / 斉藤由貴』
言わずと知れた卒業ソングですが、個人的にはこれだけ広くメディアに消費されていることに違和感を覚えています。卒業式という記号的な文化に馴染めない主人公の心情を描いた歌詞なのに、それを大衆が合唱しているのはおかしいですよね。また、”あぁ 卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう”とありますが、よっぽどこの主人公の方が誠実で優しい人間だなと思いますし、僕自身共感するところも多かったりします。ユーミンの『卒業写真』にも似たようなことを思いますね。



⑤『さくら / ケツメイシ』
こちらもメガヒット曲。僕はあまりヒップホップ方面の曲は好んで聴かないのですが、ケツメイシは少し特別だったりします。彼らの凄いところは、間や言葉の取り方がリラックスしていてリズムがとても心地良く、且つそれがちゃんと音楽と調和されているところだと思います。この『さくら』も、美しいメロディーのパートとノリの良いラップのパートが丁度よく同居しており、案外このバランスって他のグループにはなかなか出来ない気がしています。



⑥『桜が丘女子高等学校校歌[Rock ver.] / 放課後ティータイム』
アニメ「けいおん!」の劇中歌です。この曲を説明するのはなかなか文字量が必要なのですが、要は、アニメの舞台である女子高の校歌を、アニメの主役である軽音部の面々がロックバージョンで演奏しているというものです。「けいおん!」の楽曲はどれも本当にレベルが高く、アレンジもそれぞれのパートが粒立っているので聴き応えがあってカッコいいです。厳密に言えばそこまで春とは関係ないですが、高校の名前が「桜が丘」なのと、新学期っぽい曲ということで。



⑦『春のサリー 〜神社に寄ろう〜 / The SALOVERS』
僕はとにかくこのThe SALOVERSというバンドが大好きでして、Season1でも1曲紹介したんですが、今回はタイトルに春を冠したかなり渋い曲を。彼らの曲を聴いていると見事に青春の純粋さを描いているなぁと感じます。その純粋さというのは、ある意味不純であることさえ含んだ純粋さというか、光も闇もどっちつかずのものも何もかもありのままを詰め込んだ真の純粋さのように思えます。この曲もそういう音楽性が端々に窺えて、The SALOVERSというバンドの輪郭を少しなぞれる気がします。



⑧『スピードを上げて / THE 抱きしめるズ』
THE 抱きしめるズというダサカッコいいパンクバンドの曲でございます。曲中では詳しく描かれていませんが、”春の日差し”とあるように、そういう季節の別れを表現していると思われます。普段は結構むちゃくちゃやってるパンクバンドが一転こういう小綺麗な曲を書いたりすると、なかなかグッとくるところがあるというか、繊細さと過激さって裏では連動してるんだなあと感じます(銀杏BOYZなんか特にそうですね)。結局、歪んだギターの音には敵わないんだなぁ。



⑨『春色の道 / フラワーカンパニーズ』
僕の命を何度も救ったフラワーカンパニーズの曲を紹介します。今でこそ彼らはおじさんバンドですが、この曲が発売された1996年はメンバー全員20代で、音源を聴いてもどこかまだ若さが垣間見える仕上がりです。そこから時を経て、2015年にフラワーカンパニーズは武道館ライブを開催しますが、そこで演奏されたこの『春色の道』のパフォーマンスが素晴らしく、何度もDVDを見返しては感動しています。人間臭い曲を演らせたら世界一のバンドです。



⑩『Good School Girl / みきとP』
僕の人生で10本の指に入るくらい大切な曲かもしれません。この曲が発表された2015年、僕は高校生でした。歌詞で描かれている内容とは少し異なりますが、僕もそれなりに学生生活や人生に苦戦している最中で、この曲が入ったアルバムをわざわざCDで買って、お守りのようにノイズだらけの安いラジカセでよく再生していました。今になって思えば、友達も恋人もいないあの日々だって、紛れもない僕にとっての青い春だったようです。




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ちゅんのMusic Recommendary Season2 【説明】

どうも。「かんりしゃ」です。
新たな、というかマイナーチェンジした企画を始めます。

以前「ちゅん」が、1曲ずつ曲を紹介し、その音楽のデータリンクをはりつける、という活動をしていました。
今回は、これのパワーアップバージョン。
テーマを決めて、10曲選び、解説と共にapple musicでプレイリストつくる企画です。

記事の最後には、プレイリストのリンクもはりつけていますので、apple musicユーザーはぜひダウンロードしてください。
その他の方も、参考にし、音楽ライフの充実につなげてください。

どんなプレイリストができるか、楽しみやなー。

ちゅんのMusic Recommendary(10) 『オレンジに塩コショウ / アカシック』


やられた──

シンプルなロックサウンドをベースとしながらも理論やアレンジメントの奥行きが感じられる、この酷暑にぴったりの曲です。また、バンドのアイコンである理姫さんの独自なセンスが多分に散りばめられていて、エモお洒落な聴き心地になっています。


①”けろっとするには2℃足りない”

圧倒的な作詞センス……。まさに理姫さんのキャラクターを体現するかのようなリラックスした伸びやかな表現です。そのあとも、口語体で飾り気のない歌詞が続いていき、曲の世界観をどんどん作り上げます。


②”タイムライン更新しないで”

おじさんみたいなことを言いますが、「イマドキ」な歌詞ですね。ここまではっきりと現代文化の単語を入れながら、ちゃんと音楽として成立させていることに感激です。ここの部分以外にも、曲の節々に高い技術が感じられ、センスとテクニックのハイブリッドであることが窺えます。


③”オレンジに塩コショウ……”

タイトルにもなっているこの印象的なフレーズを抜粋しました。個人的に、そのタイトルの文字たちの連なりに宿る独自性や趣を「タイトル性」って言ったりしてるんですが、この曲も、そのタイトル性が著しく高いと感じます。言葉の意味自体も斬新ですし、ひらがなカタカナ漢字それぞれのバランスや語感もデザイン的で、思わず口ずさみたくなる素敵な言い回しだと思います。
曲を作るという面倒くさい山を登るにあたっては、ある程度のパターンやテンプレートを脳内に据えながら取り組むのが大体なところですが、この曲は、そういう枠組みみたいなものをあまり意識していないように感じます。前項で言及した、なかなか音楽にはそのまま取り入れにくい現代文化の単語や口語体のアプローチ、大胆な「てにをは」の省き方に至るまで、とにかく自由ですね。センスってそういうようなことだと思います。理姫さんをはじめ、この曲に携わった方たちが、「どこまで崩してどこまで整えて」ということを考えていたかは分かりませんが、自由な「センス」と規律的な「テクニック」が美しく調和された名曲と言えます。

『オレンジに塩コショウ / アカシック』
作詞:理姫
作曲:理姫



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ちゅんのMusic Recommendary(9) 『失いたくないから / 乃木坂46』

誰にもきっと
失いたくないものがあって──

今や超国民的アイドルグループとなった『乃木坂46』のかなり初期の曲です。当時の乃木坂46は結成から日が浅くなかなか難しい立場にありましたが、その分商業音楽としての力みやプレッシャーがあまり無かったため、比較的シンプルで自由な音楽性を持っていたとも言えます。


①”君の白いシャツとグレイのスカートが”

いきなりニッチなことになってしまうんですが、「グレー」ではなくて「グレイ」なことにちょっとしたお洒落心を感じられて素敵だなと思います。どれほど意図して「グレイ」を選んだのかはわかりませんが、これくらい細部にもこだわりや信念を持って何かと向き合いたいと感じます。


②”雲が少しだけ…
…素敵な笑顔で…”

歌詞とメロディーが美しく重なる素敵なBメロです。1番の同じ部分と比べて文字数が増えていて結構早口になっているんですが、それがまた良い趣を生み出しています。また、一連の表現には心理的な描写が含まれていませんが、言わずとも主人公の胸の中にある大切なものを感じることができます。


③”斜めに見える
あの青空が”

この「蛇口の水を飲む姿勢から見える斜めの青空」が、主人公にとって、そしてこの曲にとっても大きな支えになっているようです。よく考えれば、この景色ってほとんど学生の頃しか経験し得ないものですね。そんな刹那的な青春のワンカットをスタート地点にして、そこから視覚の情報と心理の情報を巧みなバランスでミックスさせていく技術は、やはり天下の秋元康だと思います。
この世には様々な音楽がありますが、アイドルにしか歌えないことってあるはずです。純粋すぎたり真っ直ぐすぎたりする歌詞でも、アイドルが歌えばそのアプローチを成立させることができるでしょう。そして、グループとしての複雑な事情やパーソナリティを抱えながら歌う姿には一瞬の圧倒的な輝きが宿り、楽曲を彩ります。この曲も、そんな歌い手の美しさと儚さが綺麗に溶け込んでいて、より一層素晴らしい仕上がりになっていると感じます。

『失いたくないから / 乃木坂46』
作詞:秋元康
作曲:蛯原ランス


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ちゅんのMusic Recommendary(8) 『きみのみかた / きゃりーぱみゅぱみゅ』

信じてみないとスタートじゃない──

ファッショナブルなキャラクターと世の中にひとこと物申す音楽性が売りの『きゃりーぱみゅぱみゅ』の1曲です。この曲も例に洩れず、キラキラしたサウンドの中に社会批判的なアプローチが含まれています。僕自身、こういうちょっと過激めな思想が見え隠れする曲はあまり好まないんですが、どうしてもカッコいいので紹介したいと思います。


①”期待のリップサービスに…
…甘いキック キミが好き”

曲の世界観を第一に提示する大事な冒頭部分ですが、本当に言葉の並べ方置き方が巧みで感心します。本題に触れすぎないような間接的な言い回しでお洒落に韻を踏みながら、最後には”キミが好き”の結び。かなりデザイン性の優れたAメロだと思います。


②”少数派は見えない”

この曲の中でもかなり比重が大きい詞だと考えられ、言わずもがな昨今の社会問題について言及しています。今回、そのことについての個人的な意見や見解は端折りますが、ここまではっきり物事に切り込むことのできる決意の姿勢こそ、『きゃりーぱみゅぱみゅ』のカリスマ性なんだと思います。そのあと、”掻き消されないメロディー”という音楽に絡めた表現でサビへと向かうのも嬉しい構成です。


③”ぼくはきみのみかた”

あれこれ社会に対しての意見を言いながらも、結局根底にある伝えたいものは”ぼくはきみのみかた”だということで、ポップさとシニカルさを同居させているきゃりーちゃんらしい楽曲テーマだと感じます。
また、音楽的な観点ですが、もともと僕は作曲者である中田ヤスタカの大ファンで、彼の世界規模な才能と技術をとても尊敬しています。この曲も、シンプルなメロディーを立体的にする高度なアレンジメントがなされており、初めて聴いたときは感服しました。本当に非の打ち所がない……。
個性的なキャラクターのボーカリスト、それを支える天才的なコンポーザー。揺るがない圧倒的なブランドの上に生まれた名曲だと言えます。


『きみのみかた / きゃりーぱみゅぱみゅ』
作詞:中田ヤスタカ
作曲:中田ヤスタカ



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ちゅんのMusic Recommendary(7) 『14番目の月 / 荒井由実』

つぎの夜から 欠ける満月より──

日本を代表する歌姫・ユーミン(旧姓時代)のちょっと渋い名曲です。切ない乙女心を描いた歌詞ながら曲調は明るくポップで、ライブを盛り上げる定番のチューンだそう。因みにですが、僕の母親がとても好きな曲です。

①”あなたの気持ちが読みきれないもどかしさ…”

ユーミンの曲の多くは恋心を描いています。そして、どちらかと言えばネガティブとも取れる複雑な心情を美しく表現するというところに、一流としての品格とオリジナリティがあると思います。この曲も、一見後ろ向きのように捉えられるかもしれませんが、上品で繊細な言葉紡ぎと高い音楽性によって、見事にポップスとして成立しています。明るさ一辺倒でもなく、説教臭くもなく、誰しもに宿る恋心そのもののリアリティを追求しリスナーの隣に座って歌うような優しさこそが、今まで多くの人に愛されてきたユーミンというミュージシャンの本質のような気がしています。


②”um…IWANUGA HANA”

す、凄いです…。耳に入る分には、「言わぬが花」でも「IWANUGA HANA」でも同じですが、歌詞の視覚性にもこだわるストイックさと茶目っ気は、ユーミン独自のものだと思います。


③”14番目の月が いちばん好き”

歌詞の意味自体の素敵さもさることながら、「14番目の月」というワードに面白さを感じているユーミンの感覚も素敵だと思います。調べたところによると、当時公開されていたとある映画の中の台詞から抜き取ったようですが、それって「このワードは曲のタイトルに使えるぞ!」という創作のアンテナが敏感だってことですよね。考えてみれば、ユーミンの曲たちはタイトルが魅力的で且つ世に溢れる他の曲たちとあまり被ってません。つまり、言葉の連なりに宿るタイトル性や独創性を見抜く力が圧倒的なんだと思います。ひとことで言ってしまえば「センス」なんですが、その非凡なセンスを20歳前後のうちから遺憾なく発揮し、日本の現代音楽の草分けに大きく貢献したんですから、余りにも偉大だとしか言えません。半世紀経ってもこうして、恋や音楽の純粋な素晴らしさを感じさせてくれるユーミンの曲たちと出会えて本当に幸せです。

『14番目の月 / 荒井由実』
作詞:荒井由実
作曲:荒井由実




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ちゅんのMusicRecommendary(6) 『ほんとのきもち / 高橋優』

それが何であれ試行錯誤し傷つけ癒しあう僕らの今日──

日本テレビ系で放送されていた「Q10」という連続ドラマの主題歌だった曲です。ドラマ自体も繊細なシナリオで素晴らしく、それを彩るようにこの曲が花を添えていました。シンガーソングライターだからこその体重の乗った歌詞に、熱い「何か」を感じるのではないでしょうか。


①”階段の片隅で座りうずくまるあの人に…”

冒頭から様々な場面での疑問が並立的に語られ、世の中や自分の周りで起こることたちが、いかに不思議で、いかに不安定で、いかに不明瞭であるかということを訴えかけます。こういう並立的な表現って、謂わば音楽における大喜利だと思います。何でもかんでも並べ立てれば良いわけじゃないですし、森羅万象の中からセンスのある単語や文章を引っ張ってこなければいけません。そういう意味では、こういう構成にしようと思ったこと自体、とてもクリエイティブなアプローチだと言えます。


②”いつからか続いてる戦争の果てに…”

2番も同じように表現が続いていきますが、その中でも一際重たいメッセージです。省こうと思えば省けたはずですが、それでもこの歌詞を選んだというところにミュージシャンとしての覚悟が窺えます。


③”「君が好き」”

真相のはっきりしないものだらけの世の中で、ただ一つ確かなのは「(今、)君が好き」という僕の気持ちだけ。この結びを思いついた時点で、曲の企画書として完璧だと思います。難しいことを解決する策を私たちはいつも何も分かりませんが、そのことを考えたり悩んだりできていること自体は肯定的に捉えたいですし、何より誰かを好きということだけは見失いたくありません。そんな忘れがちだけれど大切なことを、情熱的に思い出させてくれる名曲だと思います。

『ほんとのきもち / 高橋優』
作詞:高橋優
作曲:高橋優



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ちゅんのMusic Recommendary(5) 『ちえのわ feat.峯田和伸 / 東京スカパラダイスオーケストラ』



ばらばらにしたくない──

ゲストボーカルに銀杏BOYZの峯田和伸を招いた、東京スカパラダイスオーケストラの歌モノシリーズの中の1曲です。折り目正しいオーケストラサウンドの中を、自由な歌詞と自由な歌声が跳ね回るエネルギッシュな仕上がりになってます。

①”離れた方が楽だって
分かってはいるんだ”

頭のいい友だちはそう言うでしょう。要領良く生きようよ、ストレスフリーに生きようよ、そんな通念が飛び交ってる世の中です。周りから見れば一層、くっつき合って問題だらけの関係はバカらしく映ると思います。本人もそのことには何となく気づいていますが、それでも”ちえのわ”のままでいたいことを強く叫びます。ただの言葉では言いにくいことを言うために音楽があることを思い出せてくれます。


②”虚しくてまた元に戻した”

本当にいい例えを見つけたと思います。確かに”ちえのわ”って解いた瞬間は強烈に嬉しいですが、そのあとは段々解いてしまった虚しさがやってきて何だか拍子抜けしてしまいます。絡まったままガチャガチャしてる瞬間こそが、”ちえのわ”という存在の本質なんです。


③”めんどくさいのが愛だろっ?”

様々な人と人の関わり方があると思いますが、利益だけで付き合ってる関係ってやっぱり寂しい気がします。愛なら尚更。汚いところも難しいところも含めて愛であって欲しいですし、変な「カタチ」と変な「カタチ」が絡まり合ってて欲しい気がします。それにしても、峯田和伸という男はどうしてこうもずっと魅力的なんでしょう。「何」を歌っているかも勿論大事ですが、「誰」が歌っているかもそれと同じくらい大事です。そういう意味では、この曲を峯田和伸が歌っているということは凄く重要だと思います。彼は、生粋のミュージシャンで、生粋のボーカリストで、生粋の変な「カタチ」ですから。

『ちえのわ feat.峯田和伸 / 東京スカパラダイスオーケストラ』
作詞:谷中淳
作曲:川上つよし



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