こくりのインタビュー MuSuBu 第2弾 池田光芳さん

どうも。「かんりしゃ」です。
こくりのインタビュー企画、MuSuBuの第2弾、池田光芳さんです。
池田さんのことは、インタビュー第1弾の石田さんから紹介頂きました。
今回「かんりしゃ」とは初対面でしたが、何度かお会いしたことがあるかのような、気楽に接せさせてくださる方でした。
臨床心理士/公認心理師として活動している方です。仕事で大切にしていることのエッセンスは、インタビューにしっかりつまっていると思います。お楽しみに。

※インタビューは「かんりしゃ」と「ちゅん」とで実施しました。文字起こし・文章校正は主に「ちゅん」が担当しました。青字は「かんりしゃ」、赤字は「ちゅん」の発言です。



【池田君はいい人になりたいんか?】

 臨床心理士として働いています。主な領域としては、子ども関係ですかね。
 詳しく言うと、市役所に相談員という形で勤めていて、そこから市内にある保育園や小学校・中学校に派遣され、そこで子どもたちと関わるということを仕事にしています。

 年齢が小っちゃいところに行ってると、発達のことばかり見ているように思われがちかもしれないんですけど、僕はそうというより子どもと楽しく遊ぶということをまず大事にしています。
 あとは、その楽しく遊ぶ中で見えてくる子どもの様子なんかを担任の先生や保護者の方と共有したり、といった感じですね。やっぱり、発達の話だけをメインにしてしまうと子どもが背負わないといけないものが大きくなるというか。子どもの発達って、どういう環境で育ってきたかとか、どういう人間関係に囲まれていたかとか、どういう遊びをしてきたかとかの一つ一つが吸収されて固まっていくものだと思うので、子どものことだけを点で見るやり方は僕がやりたい心理の仕事ではないですね。



【いかに寄り添って細く長く……】

写真撮影:「きょうの野菜」



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ここからは、こんな池田さんをかたちづくった作品たちを一部紹介します。
関心があれば、リンクからご購入ください。
こくりのスタッフの工賃となります。
よろしくお願いします。

以上、こくりのインタビュー企画MuSuBuの第2弾でした。
池田さん、お忙しい中、お時間をとって頂き、本当にありがとうございました。
第3弾も、しずかーに動き出しています。こうご期待。

こくりのインタビュー MuSuBu 第1弾 石田拓也さん


どうも。「かんりしゃ」です。
こくりのインタビュー企画、MuSuBuの第1弾、石田拓也さんです。
石田さんは、臨床心理士/公認心理師としてご活躍されている、お偉い&グッドな兄ちゃんです。
このインタビューから、生きることやはたらくことについて、いろいろと感じて頂ければと思います。

※インタビューは「かんりしゃ」と「ちゅん」とで実施しました。文字起こし・文章校正は主に「ちゅん」が担当しました。青字は「かんりしゃ」、赤字は「ちゅん」の発言です。




【繋いでいきたい】

──今はどのようなお仕事をされていますか?

いわゆるカウンセラーってやつですね。
臨床心理士と公認心理師の資格を持ちながら、悩んでいる方に対して心理的な支援をしています。
大まかには二つあって、一つは自分自身がカウンセラーとして精神科クリニックとそこに併設されている心理療法オフィスで実際に患者さんとお会いするということ、もう一つは大学教員としてカウンセラーを目指す学生たちに教育を行うことなどを仕事にしています。
これまでは、スクールカウンセラーや災害支援の活動もしてきました。


──大学教員としてのお仕事ではどのようなやりがいがありますか?

これは後々の話に繋がってくるかもしれないことなんですが……。
僕にとってカウンセラーとして直接患者さんにお会いするということも大事なパートではあるんですけど、プラスアルファとして学会とか研究会とか専門家が集まる環境を提供したり維持したり運営したりといったことも大事なことだなと思っていて。
それぞれが「面白いな」「有効だな」と思っていることを広めていくためのプラットフォーム作りに関わっていくことはやりがいですし続けていきたいなと思っています。
学生の教育もある種それと似たところがあって、僕自身の「こんな面白い考え方あるよ」「こんな臨床のやり方あるよ」みたいなのを繋いでいきたい気持ちがあるからなんです。


──では、大学教員としてのお仕事で大変なことは?

やっぱり“臨床“なので、そこのエッセンスみたいなのをどう伝えるかっていうところが苦心するところですかね。学生には心理療法や臨床心理学というものが大事な仕事であるという実感を持ってキャリアをスタートして欲しいと思っていて、その実感をどう主体的に持ってもらうか。
そういう意味で言えば、僕は学生を遊びに誘っているという感じがあるのかもしれません。学生それぞれをどんな風に誘えば、「こんな面白い遊び方があるから、一緒にやろうよ」に乗ってきてくれるのか。
そういったところがしんどさでもありながら、楽しめているところと言えます。


【そこに転がってたから】

──先にもあったように、精神分析を繋いでいきたいと思ったきっかけはありますか?

そう思うようになったのは学生の頃で……。
大学生の時、先輩が一緒にフットサルしてくれたりハンバーグを食べに連れて行ってくれたりと何だかんだ面倒を見てくれたんですね。
で、その先輩にお礼を言うわけなんですけど、「僕にはお礼を言わなくていいから。あなたたちに後輩ができた時に同じことをしてあげればそれでいい」って返ってきて。
後から思えば、そういう体験が多かったんだろうなとは思いますね。


──その時から心理関係の職業に興味はあったんですか?また、今の仕事をするに至った経緯を教えてください。

その質問自体、「心理シって不思議な職業ですね」って言われてるんだろうなって思いますけど(笑)。
元々僕は小説が好きで、中学生の時にヘッセの『車輪の下』を読んで衝撃を受けたんです。
ヘッセって精神分析を始めたフロイトと繋がりがあったりして、そうすると「何やら面白いことを書ける小説家という人と心理学というのは繋がっているらしいぞ」となって。
そこから僕にとって心理学が身近になっていったんです。気づけば“そこに転がっていたから”というニュアンスでこういう道に進んだ感じはします。
ただ、大学で学んでいた基礎心理学の方に進むか、臨床心理学の方に進むかは少し迷いました。結局、一生その仕事にエネルギーを費やすことを考えれば臨床の方が面白いかなと思ったわけなんですが。


【愛とは何か?】

──石田さんにとって“働く“とは何ですか?

やっぱり精神分析をやってる人間からすると、まずフロイトの格言が浮かびますね。
「人間として成し得なければならないものは何か?」と訊かれた際に、彼は「愛することと働くこと」と答えたんですね。
僕はカウンセラーとして“働く“ときも、患者さんに対して自分自身が興味関心を持って接することを心掛けてるんですけど、これって”愛する”の一形態とも言えるはずです。
だから、“愛する“ことも”働く“こともある種同じようなことで生き方そのものだと思います。では、愛とは何か?というテーマに移っていっちゃうんですけどね……。


──では、支援職として大事にされていることはありますか?

そもそも僕は天邪鬼なので、「他人が他人にしてあげられることってそんなにあるかな?」ってまず思ったりしてて。
よく「カウンセラーだから患者さんにアドバイスするんですよね?」って言われたりしますけど、僕自身、アドバイスみたいなことはあまりしないんですよね。
そういうことよりは環境や場を提供するといった形の支援を大事にしてます。
カウンセリングだったらば、患者さんに対して会話ができる場をまず提供して、その中で患者さんに考えてもらう。
私たちのところに来られる方はもちろんアドバイスを求める人もいますけど、それまでに「ああしなさい」「こうしたら?」と色々と言われてきている人も多いんです。
アドバイス好きな人ってたくさんいますからね。だからアドバイスしないっていうのは、その人の主体性、決断を尊重することでもあると思ってます。そのための場所や時間を提供するのが第一ですね。


【人間ってもっと雑多】

──石田さんにとって仲間とはどのような存在ですか?

仲間ねぇ……(笑)。さっきの大学の先輩との話とは真逆になっちゃうんですけど、僕一人で居るの大好きなんですよね。だから、仲間とは何かと問われると困っちゃうんですけど……。
でもまぁ仲間は大事だと思いますよ。昔、僕がまだ資格を取って2年目ぐらいのときに狩野力八郎先生に質問する機会があって、「精神分析をやっていく上でまず何をしたらいいですか?」と訊いたら、「小さいグループを作って仲間というものを持ってやっていくようにしなさい」と返ってきたんですね。
それって、オフィシャルじゃない非アカデミックな部分を学んだり、文化や環境の継承を行ったりするには仲間が必要ってことだと思うので、そういう意味でも仲間は大事だと言えますね。


──スタッフのちゅんです。僕は仲間とか友達を“それぞれがそれぞれに街を歩いて行く中で、たまたまどこかの交差点でゆっくりすれ違ってる間だけの関係”みたいに思うんですね。
すれ違い終わったらもうどんどん他人になっていくみたいな。それってちょっと寂しいというか儚い感じがしてて……。
このことについてどう思いますか?

なるほど……。そこを寂しいと思うか思わないかはやっぱりその人それぞれの在り方によるんだなと思いますね。
僕なんかは人付き合い煩わしいって思うことも多いですから(笑)。学校の同級生とかもほとんど連絡取らないしなぁ……。
ただ、今でこそ近くにいないかもしれないけど、過去のそういう人たちとの関係が今の僕の生き方に反映されてるとは思うので……。
そこからどんどんすれ違っていくとしても、「じゃあまたね」って感じかなぁ、僕は。
だから寂しいと言えば寂しいかもしれないし、気付かないうちにそのすれ違った人に影響されている自分と、彼らに影響を与えた自分もいるかもしれないですね。


──ちゅんの話を僕からしてもいいですか? 彼は十代の途中から社会との関わりを失くしてしまい、それによって自分自身の感覚の成長も止まってしまっているように感じるみたいなんです。
で、例えば、“社会との関わりを失くす以前に自分と交流のあった人たちがそこからどういうプロセスを経て今を生きているか”を知ることができたら、自分自身の止まっていた時も少し動き出しそうな気がしてるらしくて……。このことについて何か彼に伝えられることはありそうですか?

んー……。まず一番に思ったのは、人間の成長ってそんな直線的なものとは限らないんじゃないかなぁってことですかね。
人間ってもっと雑多というか……。
大きい袋の中にこれもあって、あれもあって、こっちもあってあっちもあって、みたいな。
一般的には、“人間の心と体は一致していてそれに伴って順番に成長していくことが好ましい“みたいなモデルがあってしまうけど、僕自身、そこらへんは気にしなくて、もっとバラバラでしょって思います。
直線的なモデルを前提としてしまうと”そこになにもない“になっちゃうけど、そうじゃなければ”そこになにかある“はずだと思いますね。


【気がつくとそうなってるよね】

──これからの仕事や人生についてどう考えていますか?

えー、僕が訊きたいくらいなんですが(笑)。
そうですね……。まぁ、これまで色んな領域で働いてきたんですよ。病院も色んな種類のところに行きましたし、学校にしたって小中高、私立公立、都会田舎、みたいな。
で、そこから段々今やってる働き方に気づいたら馴染んできたんですよね。だからもう大きく変えることはないだろうなと思います。


──大学の教員に気づいたらなれるものなんですか?

んー、プレッシャーで発表して、プレッシャーでたまに何か書いて、プレッシャーで事務局してたらこうなってましたね(笑)。
そんなもんなんですよ。もちろんその間には自分で努力もしてますよ!
ただ、ライフプランとかキャリアプランとかもある程度は大事ですけど、それだけで上手くいくわけじゃないし……。
だから僕はやっぱり、“気がつくとそうなってるよね”みたいなのを大事にしてますね。
自分で意識して頑張っていたことが意識しないようになって、気づいたらそうなってたみたいな。カウンセリングに例えて言うと、何か悩みがあってそれについてあれこれ考える。
これまで考えてなかったことや突拍子もないようなことも頭をよぎる。それってとても意識的にやってる新しい考えですけど、それをずっと続けていると、気がつくと新しいことじゃなくなってその考え方が自分に馴染んでる。
そういう自然性みたいなものを洗練していければ良いなとは思います。

──いつのまにか動きたくなるというか、動いてしまうというか。意識して何かを動かそうというより、そういういつのまにか、というのが大切なんかもしれませんね。

あぁ、それで言ったら、この前、何かの委員会で喋ってたことがあって……。
”自立”って言葉、あるじゃないですか。最近のあの言葉の使われ方、たまに嫌だなって思う瞬間があるんですよね。
“自分から立つ”って読み下すと、「頑張って主体的にやっていけよ」みたいなニュアンスになっちゃうけど、“自ずと立つ”って読み下すと、「なんか気がついたら立ってるよね」みたいなニュアンスで解釈できるじゃないですか。
赤ちゃんだって、お母さんがいてあーやこーや……っていう環境があるから自ずと立っていくわけで。そういう自立の方が僕は良いと思ってますね。



──僕も“自立”って言葉には違和感があって。学校でも社会でも自立自立って言われ過ぎてるなぁというか、一人で立っていないと人間として成立してないみたいな風潮を感じることがあるというか……。

勿論、一般的な自立もある程度は大事ですけど、自立させる側が「自立しろ」って言うのは、結局「こちら側では抱えきれないから自立して」って言ってるだけだと思ったりもするので……(笑)。バランスですね。


──最後に、今までの話で一番伝えたいことはありますか?

そうですね……。“雑多性”かな。
一個前の話で言えば、現代の自立の概念って「資本主義を成り立たせるための歯車になれ」ってことだと思うんですね。そのためには、人間は一人の人物として確固たる存在になってないといけないし、統一されたマニュファクチュアの中に居ないといけないし……。
でもそんなの無理じゃないですか。だから、そういう規格的なものに縛られない“雑多性”をやれるような環境を作ろうとしてるんですよね。


──本日は、お時間とっていただき、また貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


──ありがとうございました。


写真撮影:「きょうの野菜」



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ここからは、こんな石田さんをかたちづくった作品たちを一部紹介します。
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こくりのスタッフの工賃となります。
よろしくお願いします。

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以上、こくりのインタビュー企画MuSuBuの第1弾でした。
石田さん、お忙しい中、お時間をとって頂き、本当にありがとうございます。
この記事ではおさまりきらないほど、本当にいろいろなお話をしてくださいました。ありがとうございます。エッセンスはしっかりとつまった記事になっていると思います。

「雑多性」を認めると「ない」から「ある」に認識が変わる、というのは、こくりの大切にしたいこととも合致し、勇気づけられました。

また、この記事を通して、石田さんのことはもちろん、「ちゅん」や「きょうの野菜」の人柄も少し浮かび上がる感じがして、それもこくりらしいと思いました。


石田さんにご紹介頂き、次のインタビューする方も決定しています(笑)。しばし待たれよ。

インタビューはMuSuBuに決定!!


どうも。「かんりしゃ」です。

けっこう前に、インタビューの企画、ええ感じやん、という記事を書いていましたが、もう少しでアップできるところまで準備できました。

そこのインタビューにも少しありますが、スタッフの「ちゅん」が「かんりしゃ」と話している時、自分の時間が止まっている、誰かが進んできた道やこれからすすむ道を知れたら、自分の時間も動き出すかも、的なことを言ってくれてました。

あたためていたインタビュー企画とぴったりやん、ということで、インタビュー実施に向けて、動き出すこととなりました。


名称は、いろいろな人や思いを結ぶ企画になることを期待して「MuSuBu」とします。


超マイペースでいきます。
数年後~数十年後にはたくさんの記事があがってるような企画になればと思います。
楽しみやな―。どんな出会いがあるでしょうか。

よろしくおねがいします。

インタビューについて

この企画をふと思いついた時は、「これはおもろいなー」と我ながらワクワクしました。

こくりの代表は10余年「支援者」という生き方をしてきたので、たくさんの「支援」という職に就いている人に出会ってきました。

まぁ多くの人がけっこう不器用で個性的で、中には大変おもしろく尊敬できる方もおられます。

そんな尊敬できる人が、なぜ「支援者」という生き方を選ぶに至ったのか、どういう支援哲学を持っているのかを知りたいと思いました。

そこで、まずわたしが尊敬できる支援者にインタビューを行い、そこからその人が尊敬できる支援者を紹介頂きインタビューをし、そしてまたその人に次の支援者を…と数珠つなぎできないものかと思いました。

いろいろな人に出会えるし、話を聞けるし、良い勉強になりそうにも思いました。

どこまでうまくいくかは分かりませんが、当事業所の活動の柱の1つとしてぼちぼち動いていけたらと思っています。

よろしくおねがいします。