ちゅんのMusicRecommendary(6) 『ほんとのきもち / 高橋優』

それが何であれ試行錯誤し傷つけ癒しあう僕らの今日──

日本テレビ系で放送されていた「Q10」という連続ドラマの主題歌だった曲です。ドラマ自体も繊細なシナリオで素晴らしく、それを彩るようにこの曲が花を添えていました。シンガーソングライターだからこその体重の乗った歌詞に、熱い「何か」を感じるのではないでしょうか。


①”階段の片隅で座りうずくまるあの人に…”

冒頭から様々な場面での疑問が並立的に語られ、世の中や自分の周りで起こることたちが、いかに不思議で、いかに不安定で、いかに不明瞭であるかということを訴えかけます。こういう並立的な表現って、謂わば音楽における大喜利だと思います。何でもかんでも並べ立てれば良いわけじゃないですし、森羅万象の中からセンスのある単語や文章を引っ張ってこなければいけません。そういう意味では、こういう構成にしようと思ったこと自体、とてもクリエイティブなアプローチだと言えます。


②”いつからか続いてる戦争の果てに…”

2番も同じように表現が続いていきますが、その中でも一際重たいメッセージです。省こうと思えば省けたはずですが、それでもこの歌詞を選んだというところにミュージシャンとしての覚悟が窺えます。


③”「君が好き」”

真相のはっきりしないものだらけの世の中で、ただ一つ確かなのは「(今、)君が好き」という僕の気持ちだけ。この結びを思いついた時点で、曲の企画書として完璧だと思います。難しいことを解決する策を私たちはいつも何も分かりませんが、そのことを考えたり悩んだりできていること自体は肯定的に捉えたいですし、何より誰かを好きということだけは見失いたくありません。そんな忘れがちだけれど大切なことを、情熱的に思い出させてくれる名曲だと思います。

『ほんとのきもち / 高橋優』
作詞:高橋優
作曲:高橋優



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